眠っている犬や猫の足が小さく動いていたり、「ワフッ」と短く鳴いたりしている姿を見ると、「夢を見ているのかな」と感じることがあります。
一方で、「これは普通なのだろうか」「発作ではないのか」と少し不安になることもあるかもしれません。
実際、犬や猫の睡眠については研究が進んでおり、人間と似た睡眠段階を持つことが分かっています。ただし、「人間と同じような夢を見ている」とまでは断定できません。
この記事では、犬猫の睡眠中の行動について、科学的に分かっていることと、まだ推測の段階にあることを分けながら整理していきます。
犬猫にも“睡眠の段階”がある
REM睡眠とノンREM睡眠とは
人間の睡眠には、浅い眠りや深い眠りを行き来する「ノンREM睡眠」と、脳が比較的活発に動く「REM睡眠」があります。
犬や猫でも、同じような睡眠段階が確認されています。
2024年の猫の脳波研究では、猫にもREM睡眠とノンREM睡眠が存在し、犬と大きく共通した睡眠構造を持つことが示されました。人間と同じように、睡眠中でも脳活動のパターンが変化していることが分かっています。
犬猫でも確認されている脳活動
REM睡眠では、脳は比較的活発に働いています。一方で、身体の筋肉は強く抑制されるため、本来は大きく動きにくい状態になります。
ただし、完全に静止するわけではありません。
REM睡眠中には、次のような動きが見られることがあります。
- 足先の小さなピクつき
- ひげやまぶたの動き
- 呼吸リズムの変化
- 小さな鳴き声
そのため、眠っている犬や猫が少し動いているからといって、すぐに異常とは限りません。
犬猫は本当に夢を見ているのか
科学的に言えること・言えないこと
現在の研究では、「犬や猫は夢のような体験をしている可能性が高い」と考えられています。
ただし、ここで大事なのは、「可能性が高い」と「証明された」は違うということです。
人間の場合は、目覚めたあとに「どんな夢を見たか」を言葉で説明できます。しかし、犬や猫は主観を言葉で報告できません。
そのため研究者たちは、
- 睡眠中の脳波
- 神経活動
- 睡眠中の行動
- 記憶処理との関連
といった情報から、間接的に推測しています。
つまり、「夢を見ていると考えられている」と表現することはできても、「人間と同じような夢を見ている」と断定することはできません。
「夢を見ている可能性が高い」とされる理由
研究では、睡眠中に起きている脳活動が、起きている間の経験と関連している可能性も示されています。
犬の研究では、学習後の睡眠が記憶の定着と関係していることが確認されています。これは、人間の夢研究でも重要視される「経験の再処理」と似た方向性です。
また、古典的な猫の研究では、REM睡眠中の筋抑制が外れると、探索や狩りのようなまとまりのある行動が現れることも報告されています。
こうした研究が、「夢のような内部体験があるのではないか」と考えられる理由のひとつです。
人間の夢との違い
ただし、ここで注意したいのは、人間の感覚をそのまま当てはめすぎないことです。
「飼い主と散歩している夢を見ている」 「おやつの夢を見ている」
といった解釈は、気持ちとしては自然ですが、科学的に確認されているわけではありません。
研究から分かっているのは、次のような点までです。
- 睡眠中に脳活動があること
- REM睡眠が存在すること
- 記憶や行動との関連が示唆されていること
“どんな内容の夢か”までは分からない、という距離感を持っておくほうが、過剰な擬人化を避けやすくなります。
寝言や足のピクつきはなぜ起きるのか
REM睡眠中に起きる身体反応
REM睡眠では、身体全体の筋肉は抑えられていますが、一部では細かな運動が起こります。
そのため、
- 足が軽く動く
- 鼻先がヒクヒクする
- 小さく鳴く
- 呼吸が少し不規則になる
といった反応は、REM睡眠による生理現象として説明できることがあります。
特に短時間の小さなピクつきは、多くの犬猫で見られる行動です。
まぶた・ひげ・呼吸の変化
REM睡眠中は、まぶたの下で眼球が動く「急速眼球運動」も起きます。
そのため、閉じたまぶたが少し動いて見えることがあります。また、ひげや耳先が細かく反応することもあります。
これらは単独で見ると不思議に感じますが、睡眠中の神経活動の一部として理解できる現象です。
日中の活動や年齢との関係
研究では、活動量や年齢によって睡眠の見え方が変わる可能性も示されています。
子犬ではREM睡眠の割合が比較的高く、成長とともに変化していく傾向があります。
また、刺激の多い日やよく遊んだ日のあとには、睡眠中の動きが目立つように感じることもあります。
「今日はたくさん遊んだからかな」と感じることは、必ずしも不自然なことではありません。
日中の活動量との関係を見たい場合、睡眠中の様子を記録できる見守りカメラが使われることもあります。
どこから“注意が必要”なのか
正常な睡眠行動の特徴
一般的な睡眠中の動きには、次のような特徴があります。
- 数秒程度で終わる
- 小さく部分的に動く
- 起きたあと普段どおりに戻る
「少し足が動いていた」「小さく鳴いた」程度であれば、まずは落ち着いて様子を見ることが多いでしょう。
発作や異常行動との違い
一方で、次のような様子が見られる場合は、単なる睡眠中のピクつきとは区別して考える必要があります。
- 身体全体が硬直する
- 激しく暴れる
- 長く続く
- よだれや失禁を伴う
- 起きたあとに混乱が続く
- 短時間で何度も繰り返す
特に、「寝ている間だから大丈夫」とは言い切れません。
獣医療の解説でも、発作は睡眠中や夜間に起きることがあるとされています。
迷ったときに観察したいポイント
睡眠中の動きが気になったときは、次のような点を見ておくと判断材料になりやすくなります。
- どのくらい続いたか
- 身体全体か一部か
- 起きたあと普段どおりか
- 何度も繰り返していないか
また、動画を残しておくと、受診時の参考になることがあります。
日々の様子を簡単に記録しておけるメモや健康記録アプリを使う人もいます。
不安が強い場合や、「いつもと違う」と感じる場合は、無理に自己判断せず相談先を持っておくことも大切です。
コーネル大学獣医学部のてんかん解説でも、発作時には動画記録が役立つことが紹介されています。
「夢を見ているみたい」をどう受け止めるか
眠っている犬や猫の姿は、見ているだけで安心することがあります。
足を動かしたり、小さく鳴いたりしていると、「何を見ているんだろう」と想像したくなるのも自然なことです。
現在の研究では、犬や猫がREM睡眠を持ち、夢のような内部体験をしている可能性は高いと考えられています。
ただし、その内容までは分かっていません。
だからこそ、
- 分かっていること
- まだ分からないこと
- 注意したい異常サイン
を分けて理解しておくことが大切です。
「かわいい」で終わらせず、普段との違いに気づける観察につなげることは、犬猫の健康を見守ることにもつながっていきます。






