犬を飼うことを考え始めたとき、多くの人がまず思い浮かべるのは、名前や食事、散歩のことかもしれません。一方で、犬との暮らしには、法律で決められている最低限の義務があります。
難しそうに感じるかもしれませんが、知っておくべき内容はそれほど多くありません。この記事では、全国共通で定められている法的な義務を中心に、あわせて「条例」という形で自治体ごとに定められている考え方があることを整理します。
「全部完璧に守らなければ」と身構える必要はありません。まずは、何が必須で、どこまで知っておけば安心かを一緒に確認していきましょう。
日本では、狂犬病予防法に基づき、犬の飼い主にいくつかの義務が課されています。これは、犬や人の命と健康を守るための制度です。
生後91日以上の犬を飼う場合、市区町村への登録(畜犬登録) が義務づけられています。登録は犬の一生で一度行えばよく、毎年更新するものではありません。
登録の目的は、次のような点にあります。
引っ越しをした場合や、飼い主が変わった場合には、登録内容の変更届が必要です。また、犬が亡くなったときも、届け出を行います。
生後91日以上の犬には、年に1回の狂犬病予防接種が義務づけられています。多くの自治体では、春から初夏(4〜6月頃)に集合注射が実施されます。
狂犬病は、発症するとほぼ100%致死となる感染症です。日本国内では長年発生していませんが、海外では現在も発生している地域があります。
そのため、
を目的として、予防接種が制度として維持されています。
畜犬登録を行うと「鑑札」が、予防接種を受けると「注射済票」が交付されます。これらは、登録・接種を済ませていることを示す標識で、首輪などへの装着が求められています。
鑑札や注射済票がついていれば、迷子になった場合でも、飼い主が特定されやすくなります。制度としては義務ですが、日常的には「犬の身元証明」のような役割を担っています。
登録や予防接種、標識の装着を行わなかった場合、法律上は罰則が定められています。ただし、制度の主な目的は罰することではなく、適切な飼育と社会の安全を守ることにあります。
多くの場合、自治体では案内や周知を通じて、手続きを促す対応が中心です。「知らなかった」という状態を避けることが、何より大切だといえます。
法律とは別に、犬の飼い方については、自治体ごとに条例で定められている事項があります。内容は地域によって異なりますが、多くの自治体で共通する考え方があります。
多くの自治体では、散歩中はリードをつけることが求められています。これは事故やトラブルを防ぐためのもので、犬自身を守る意味もあります。
自宅でも、門扉や柵の管理など、犬が外に出てしまわない工夫が必要とされています。
鳴き声や糞尿によるトラブルを防ぐため、条例や関連規則で配慮が求められることがあります。
いずれも、「守らなければならない細かいルール」というより、地域で一緒に暮らすための前提として位置づけられています。
犬が人を噛んでしまった場合など、自治体への届出が義務づけられているケースがあります。事故後は、被害者への対応を最優先し、その後に自治体や保健所へ連絡します。
詳細な対応は自治体によって異なるため、事前に「そういう決まりがある」という認識を持っておくことが大切です。
初めて犬を飼う人が、つまずきやすい点もいくつかあります。
畜犬登録や狂犬病予防接種は、飼い主の判断で省略できるものではありません。室内飼いの場合でも、義務が免除されるわけではない点は、誤解されやすいポイントです。
引っ越しをしたときや、犬が亡くなったときの届出は、忘れられがちです。登録情報を正しく保つことも、制度の一部とされています。
近年、マイクロチップの登録情報をもとに、畜犬登録手続きを簡略化できる自治体も出てきています。ただし、すべての自治体が対象ではなく、注射済票の交付などは従来通り必要です。
法律や条例と聞くと、どうしても堅苦しく感じてしまいます。けれど、これらの義務は、犬と人が安全に、そして気持ちよく暮らすための前提として設けられています。
すべてを完璧に暗記する必要はありません。「全国共通で必ず必要なこと」と「地域ごとに確認しておきたいこと」がある、という整理ができていれば十分です。
不安になったときは、自治体の窓口や獣医師に相談することもできます。知っているだけで、犬との暮らしはずっと安心したものになります。