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犬が人やほかの犬にマウンティングするとき|理由と止めたい場面の見分け方
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犬が人やほかの犬にマウンティングするとき|理由と止めたい場面の見分け方

愛犬が人の脚にしがみついたり、遊んでいる犬の背中に乗ったり、クッションに腰を動かしたりする。そんなマウンティングを見ると、「発情しているのかな」「相手より上だと示している?」「すぐに止めた方がいい?」と迷うことがあります。

マウンティングには性的な背景がある場合もありますが、それだけで説明できる行動ではありません。遊びや興奮の高まり、ストレスや不安と関連して現れることもあります。一度のマウンティングから理由を当てようとするより、何の直後に起きたか、誰や何に向かっているか、相手はどう反応しているか、その後に落ち着けるかを見る方が、対応を考える手がかりになります。

マウンティングは、性行動だけでは説明できない

犬のマウンティングには、性的・生殖的な背景があります。未去勢のオスや発情中のメスでは、性ホルモンが関係して起こる場合があります。

一方、避妊・去勢をしている犬にもマウンティングは見られ、オスだけでなくメスにも起こります。避妊・去勢によって減る場合はありますが、手術をすれば必ずなくなる行動とは考えにくいものです。

また、犬同士の遊びの中にマウンティングが含まれることもあります。来客や新しい犬との出会い、激しい遊びなど、興奮が高くなった場面で現れることもあれば、ストレスや不安が背景にある場合もあります。ただし、マウンティングをしたという事実だけで「この犬はストレスを感じている」と逆算することはできません。

「上下関係を示している」と一場面だけで決めない

マウンティングは「相手を支配しようとしている」「飼い主より上になろうとしている」と説明されることもあります。

犬同士に優位関係が成立すること自体を否定する必要はありません。ただし、行動学でいう優位性は、個体の「支配したい性格」そのものではなく、個体間で繰り返される関係から評価する概念です。

一度人や犬に乗ったことだけで「この犬が上で、相手が下」と判断することはできません。マウンティングだけで上下関係を読み取るより、その前後に起きていたことを確認する方が、実際の対応につながります。

理由を当てるより、前後の様子を見る

家でマウンティングを見たとき、飼い主が原因を正確に診断する必要はありません。行動が起きた状況を項目ごとに見ると、何がきっかけになっているのかを捉えやすくなります。

何の直後に起きたか

来客した直後、家族が帰宅したとき、犬同士の遊びが激しくなったところなど、行動の少し前に何があったかを見ます。たとえば、来客のたびに人へ乗るのであれば、「来客」という場面と行動に何らかの関係があると考える材料になります。ただし、それだけで「不安が原因」「興奮が原因」と決めることはできません。

誰・何に向かっているか

特定の犬にだけ乗るのか、初対面の犬にもするのか。人にはするが犬にはしないのか。特定の家族だけなのか、クッションなど決まった物だけなのか。

対象の違いも、行動を理解する材料になります。同じ「マウンティング」という見た目でも、人・犬・物では周囲に生じる負担や安全上の問題が異なります。

相手はどう反応しているか

犬同士では、乗った犬だけでなく、乗られた犬の反応も見ます。その後も双方が遊びを続けているのか、それとも、相手が離れようとしている、顔を背ける、体が硬くなる、威嚇するといった交流を終えたそうな様子があるのかを確認します。

ひとつの仕草だけで感情を決めず、複数の動きとその後のやり取りを合わせて見る方が適しています。

中断したあとに切り替えられるか

呼びかけたり距離を取ったりしたあと、別の行動へ移れるのかも見ておきたいところです。いったん離れると落ち着くのか、すぐに同じ相手を追って再開するのか、刺激がなくなっても繰り返し続けるのかを確認します。こうした違いは、「なぜしているか」を断定するためではなく、見守るか、環境を変えるか、相談するかを考える材料になります。

行動が気になる場合は、いつ、誰に、何の直後に起きたかを短く残しておくと、変化を振り返りやすくなります。獣医師へ相談するときには、記録や動画が状況を伝える材料になることもあります。

見守るか止めるかは、相手と安全性で考える

「1日何回なら問題ない」「何秒続いたら止める」といった基準を、すべての犬に一律に当てはめることはできません。回数や継続時間だけで線を引くより、相手に負担があるか、安全を損なっていないか、興奮が高まり続けていないか、行動を切り替えられるかを見る方が現実的です。

ほかの犬に乗るとき

犬同士の遊びの途中で、一時的にマウンティングが現れることがあります。その後も双方が交流を続け、相手が明らかに嫌がっておらず、別の遊びへ移れているなら、一度マウンティングがあっただけで異常や攻撃と決める必要はありません。

一方、相手が離れようとしているのに追いかけて乗る、体が硬くなる、威嚇が出る、一方だけが繰り返し続けるといった状態なら、いったん距離を取る方がよいでしょう。

ここでは「遊びかどうか」を完璧に見抜くことより、相手の犬がその交流から離れる選択をできているかを見る方が役立ちます。

人に乗るとき

人へのマウンティングも、性的な理由だけとは限りません。興奮やストレス、不安と関連して現れる場合があります。

ただし、人が怖い、痛い、不快だと感じているなら、理由が確定するまで受け入れる必要はなく、人への接触そのものを中断して構いません。特に、体勢を崩しやすい相手など、安全面が気になる場面では、マウンティングの意味を考えることより、接触を避けられる状態を作ることを優先します。

クッションやぬいぐるみに乗るとき

クッションや毛布など、物へのマウンティングも、それだけで異常とは言えません。一時的で、自分から別の行動へ移れ、安全や休息を損ねていないのであれば、必ず禁止する必要があるとは限りません。

反対に、長く繰り返して休めない、刺激がなくなっても切り替えにくい場合は、行動の頻度だけでなく生活への影響を見る必要があります。クッションなどを同時に壊して食べようとする場合は、マウンティングとは別に、破損した物を口にする危険を理由としてアクセスを管理します。

止めたいときは、叱るよりいったん切り替える

中断するときは、強く叱る、蹴る、膝で押し返すなど、痛みや恐怖を与える方法に頼らないようにします。来客時や特定の犬との遊びなど、起こりやすい場面がわかっているなら、興奮が高くなる前に距離を取る、遊びの途中で休憩を入れるなど、行動が起こる状況そのものを調整できます。

すでに始まっている場合は、犬が覚えている呼びかけを使ったり、別の行動へ切り替えたり、その場から距離を取ったりします。マウンティングとは別の行動へ移れたら、そこで交流を再開するか、そのまま休ませるかを考えます。

止めようとすると唸る、噛もうとするなどの反応がある犬を、手で無理に引き離すのは避けたい場面です。マウンティング自体よりも、人が噛まれる可能性を含む安全上の問題として扱います。

急に増えた、生活を妨げるときは相談を考える

これまでほとんどなかったマウンティングが急に始まった、以前より目立って増えたという変化があるときは、行動だけの問題と決めない方がよい場合があります。

尿路感染や尿失禁、皮膚のかゆみなど、身体的な問題がマウンティングのような行動に関連する場合もあります。排尿の変化や陰部を頻繁になめるなど、ほかの身体的な変化も一緒にあるなら、獣医師へ伝える材料になります。

また、刺激がなくなっても繰り返し続ける、睡眠や休息など普段の生活を妨げる、ほかの犬との衝突を繰り返す、中断しようとすると攻撃行動が出る場合も、専門的な評価を考える目安になります。

まずはかかりつけの獣医師へ相談し、必要に応じて行動診療につなげる方法があります。行動診療を専門とする獣医師については、日本獣医動物行動学会の認定医制度でも確認できます。

まとめ

犬がマウンティングをしていると、その理由を「性欲」「支配」「ストレス」のどれかに当てはめたくなることがあります。しかし、一度の行動だけでは、その背景までは決められません。

確認したいのは、何の直後に起きたか、誰や何に向かっているか、相手は交流を続けたがっているか、中断後に切り替えられるかという前後の流れです。

相手が離れたがっている、人が困っている、安全上の問題があるなら、原因がわかる前でも中断できます。一方で、一時的で周囲に負担がなく、犬自身も普段の生活へ戻れているなら、マウンティングがあったことだけを理由に問題と決める必要はありません。

回数だけではなく、相手への負担、安全性、生活への影響、以前からの変化を見る。この軸があると、「止めるべきか」という迷いを、その場の状況に合わせて整理しやすくなります。

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