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ハリネズミの針は毛なの?生え方と体を守るしくみ
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ハリネズミの針は毛なの?生え方と体を守るしくみ

ハリネズミを見ていると、背中を覆うたくさんの針にまず目が向きます。硬く尖った見た目からすると、柔らかな「毛」とはまったく別のものにも見えます。

けれど、生物学的には、ハリネズミの針は一般的な被毛と切り離された別の器官ではありません。「特殊化した毛」と捉えられています。

しかも、針の特徴は硬く尖っていることだけではありません。1本の内部にも独特な構造があり、皮膚の中では毛包から形成されます。警戒したときには、針そのものが勝手に動くのではなく、皮膚や筋肉の働きによって向きが変わります。針の正体から、丸くなって体を守るまでを順番にたどると、ハリネズミらしい姿がひとつのしくみとして見えてきます。

ハリネズミの針は、特殊化した「毛」

ハリネズミの針は、一般的な柔らかい被毛とは形も太さも性質も大きく異なります。それでも、生物学的な位置づけとしては「毛が特殊化したもの」と考えるのが適切です。

ヨツユビハリネズミでは、背中の針が生える組織と腹部の毛が生える組織を比べると、針の形成にも、毛と関係するケラチン系のしくみが関わっていることが分かります。さらに、針をつくる毛包もあります。

そのため、「毛なのか、毛ではないのか」を完全な二択にするよりも、普通の被毛とは大きく形を変えた、特殊な毛と考えると実際の構造に近くなります。

「普通の毛」とまったく同じではない

特殊化した毛だからといって、針を「普通の毛が少し硬くなっただけ」と考えるのも正確ではありません。背中の針と腹部の毛は、同じハリネズミの皮膚付属器でありながら、それぞれが形成される組織には違いがあります。針は、防御に使えるほど太く硬い形へ大きく変化しています。「毛とつながった構造ではあるけれど、見た目や役割は大きく違う」という二つの面を合わせて考えると、針の位置づけが分かりやすくなります。

針の中は「空っぽ」ではない

ハリネズミの針については、「中が空洞になっている」と説明されることがあります。ただし、ストローのように中が何もない一本の管をイメージすると、実際の構造とは少し違います。

針の外側には密な層があり、内側には空隙を多く含む構造があります。さらに内部には、針を横切るような隔壁や、長い方向へ伸びる補強構造もみられます。

つまり、空間を含んではいるものの、内部がすべて空っぽになっているわけではありません。こうした構造は、針が力を受けたときにつぶれたり折れ曲がったりしにくくすることに関係しています。硬い材料をぎっしり詰め込んだ棒ではなく、内部に空隙と支えを組み合わせた構造になっているところにも、ハリネズミの針の特徴があります。

針は皮膚に刺さっているのではなく、毛包から生えている

背中に並ぶ針だけを見ると、小さな針が皮膚へ刺さっているようにも見えます。実際には、外から差し込まれたものではありません。

ヨツユビハリネズミでは、針は皮膚の中にある毛包から形成されます。普通の毛と形は大きく違っていても、体が皮膚の中でつくり、そこから外側へ伸ばしている構造です。

針の皮膚側には膨らんだ基部もあります。この部分には、力を受けた針が体の内側へ押し込まれにくくする働きがある可能性があります。

「体に針をまとっている」という見た目よりも、皮膚そのものが硬い針をつくっていると捉えるほうが、ハリネズミの体のしくみに近いイメージです。

針そのものが動くのではなく、皮膚と筋肉が向きを変える

ハリネズミは落ち着いているときと警戒しているときで、針の見え方が大きく変わります。「針を立てる」と表現されますが、針そのものに動く力があるわけではありません。

針の向きを変える働きには、毛包を含む皮膚と、その下にある筋肉が関係しています。ヨーロッパハリネズミの背中には発達した皮下の筋肉があり、針の毛包はその筋肉の層と深く結びついています。また、別のハリネズミ種の皮膚には、一般的な毛を立てるときにも働く立毛筋があります。ヨツユビハリネズミでも、警戒刺激を受けたときに、背中側の筋肉が収縮する様子が観察されています。

こうした知見を合わせると、針はそれ自体が動くというより、針を支えている皮膚や毛包、その周囲の筋肉が動くことで角度が変わると理解できます。

「1本ずつ自由に動かしている」とは言い切れない

「ハリネズミは針を1本ずつ自由に立てたり寝かせたりできる」と説明されることもあります。しかし、立毛筋の存在や、針の毛包と背中の筋肉との関係は分かっていても、それだけでヨツユビハリネズミがすべての針を1本ずつ独立して操作しているとは言い切れません。針だけを切り離して考えるよりも、針のある皮膚とその下の筋肉が一緒に動くしくみとして見るほうが、分かっている体の構造に沿っています。

丸くなると、針のある皮膚全体が防御の形になる

ハリネズミの防御は、針を起こすだけで完結するものではありません。警戒した段階では、針を起こし、体を低くするような反応がみられます。さらに強い脅威を感じると、針のある皮膚そのものを使って全身を包むように丸くなります。

この動きには、皮膚を広く動かす筋肉(panniculus muscle)と、その縁にある筋肉(orbicularis)が関わります。皮膚を広く動かす筋肉が収縮すると、ゆとりのある針のついた皮膚が体の周囲へ引き寄せられます。さらに、その縁にある筋肉が、巾着のひもを締めるように皮膚の縁を絞ります。

その結果、顔や脚、腹側の柔らかい部分が内側へ入り、外側には針のある皮膚が広がります。つまり、ハリネズミが丸くなった姿は、単に体を小さく縮めているわけではありません。針、毛包、皮膚、筋肉、姿勢が組み合わさって、防御に向いた形をつくっています。

ハリネズミは針を飛ばさない

針を持つ動物という印象から、ハリネズミも敵へ向けて針を飛ばすと思われることがあります。しかし、ハリネズミの針には皮膚側に保持される基部があり、外敵へ射出するようなつくりではありません。針を飛ばして攻撃するのではなく、針のある皮膚を外側へ向け、自分の体を守る方向に使います。

ヤマアラシにも特殊化した毛でできた針がありますが、その構造や力学的な特徴はハリネズミと同じではありません。「針がある」という共通点だけで、同じしくみだと考えないほうが実際に近くなります。

まとめ

ハリネズミの針は、普通の被毛とは大きく姿を変えていますが、生物学的には毛から特殊化した構造です。皮膚の中にある毛包からつくられ、1本の内部にも空隙や支えを組み合わせた構造があります。

警戒したときに変わるのは、針そのものだけではありません。針を支える皮膚や毛包、その下の筋肉が動き、さらに強い脅威に対しては針のある皮膚全体を使って体を包み込みます。

ハリネズミらしい「針のある背中」と「丸くなる姿」は、別々の特徴ではなく、体の構造がつながって生まれるひとつの防御のしくみとして見ることができます。

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