ケージの中にまとまった毛が落ちている。牧草を集め、自分のお腹の毛まで抜いて巣のようなものを作っている。そんな姿を初めて見ると、「毛を抜いて大丈夫?」「もしかして妊娠している?」と戸惑うかもしれません。
メスのうさぎの巣作りや抜毛は、妊娠に伴ってみられる行動です。一方、実際には妊娠していない「偽妊娠」でも、よく似た巣作りや抜毛がみられます。そのため、巣を作ったという事実だけから妊娠か偽妊娠かを決めることはできません。
また、毛を抜いていることだけに目を向けると、皮膚や全身状態の変化を見落としてしまいます。いま確認したいのは、毛を抜いた場所の皮膚がどうなっているか、いつもどおり食べて便をしているか、普段と比べて元気があるかといった点です。
毛を抜いて巣を作るのは、妊娠だけで起こる行動ではない
メスのうさぎが毛を抜いて巣を作ること自体は、必ずしも異常な行動ではありません。妊娠しているうさぎでは、出産が近づくと草などを集めて巣を作り、腹部や乳房周辺の毛を巣材として使う行動がみられます。
こうした巣作りが活発になる時期の目安は、出産の約3日前から数時間前にかけてです。妊娠期間はおよそ30日ですが、この時期や巣作りの有無だけで、家庭で妊娠を判断できるわけではありません。
偽妊娠でも巣作りや抜毛がみられる
妊娠していなくても、妊娠時に似た体や行動の変化が起こる「偽妊娠」があります。偽妊娠では、巣材を集めたり、腹部の毛を抜いたりするほか、巣を守るような行動がみられることもあります。つまり、「巣を作ったから妊娠している」とも、「妊娠していないから巣作りは異常」とも限りません。
偽妊娠の期間は、黄体期が約15〜16日であることなどから2〜3週間程度とされることもあります。ただし、2〜3週間という期間は確かな判断基準とはいえないため、期間だけで判断しないようにしましょう。
妊娠か偽妊娠かは、巣作りだけでは判断できない
巣作りや抜毛は妊娠と偽妊娠のどちらでもみられるため、行動だけで見分けるのは難しいものです。まず確認したいのは、オスと接触した可能性です。同居しているオスがいる、最近オスと接触する機会があったなど、交尾の可能性を否定できない場合には、偽妊娠と決めつけないようにしましょう。
一方、オスとの接触に心当たりがない場合でも、巣作りや抜毛だけから「偽妊娠に違いない」と家庭で確定する必要はありません。妊娠の有無を確認する必要があるときは、動物病院で相談するほうが確実です。
お腹を触るなどして、家庭で胎仔がいるか確かめようとするのも避けましょう。目につきやすい巣作りの行動だけで答えを出そうとするより、「妊娠の可能性があるか」と「体調に異常がないか」を分けて考えると状況を整理しやすくなります。
毛を抜いた場所と、皮膚の状態も確認する
巣作りに伴う抜毛か、それ以外の問題も考えたほうがよいかを見分ける手がかりのひとつが、毛を抜いた場所とその下の皮膚です。妊娠に伴う巣作りでは、腹部や乳房周辺の毛を抜くことがあります。このような生理的な抜毛では、毛が抜けていても皮膚そのものに傷がないことが判断の手がかりになります。
反対に、次のような変化があれば、「巣作りで毛を抜いただけ」と考えず、皮膚の状態も確認しましょう。
- 皮膚が赤くなっている、腫れている
- かさぶたや出血がある
- 激しく掻いている
- 痛そうな様子がある
- 腹部や乳房周辺だけではなく、広い範囲で毛が抜けている
こうした変化があっても、家庭で原因を特定する必要はありません。皮膚を確認するのは、皮膚病かどうかを診断するためではなく、いつもの巣作りとして考えてよさそうか、それ以外の問題について動物病院で確認したほうがよさそうかを見分けるためです。
受診を考えるときは、食欲・便・元気も一緒に見る
巣作りをしていると、どうしても抜けた毛や巣に目が向きます。ただ、受診を考えるときは、巣作りとは分けて、食欲や排便、活動性などの全身状態も確認しましょう。
普段食べている牧草やペレットを食べているか、便の量が減っていないか、いつもと同じように動いているかを見てみましょう。食欲の低下と便の減少・停止は、巣作りや偽妊娠だから起きていると決めつけないほうがよい変化です。
受診までの時間には「数時間」「12時間」「24時間」など複数の目安がありますが、どのうさぎにも共通する基準とはいえません。「何時間なら待ってよい」と時間だけで線を引くのではなく、食べない、便が減る・出ないという変化そのものを、受診を相談する判断材料にしましょう。
元気がなくなる、体を丸める、強い歯ぎしりをするなど、痛みを疑う変化も同様です。呼吸が苦しそう、出血しているといった変化があれば、巣作りの経過を見ることより受診を優先しましょう。
巣作りだけで、食欲や便が普段どおりなら
巣作りや抜毛があっても、皮膚に傷がなく、食欲・排便・活動性にも変化がみられない場合には、それらを確認しながら経過を見る余地があります。
ただし、妊娠の可能性を否定できない場合は別です。オスとの接触歴などを振り返り、妊娠している可能性がわからなければ、動物病院で相談すると状況を整理しやすくなります。
巣作りをしている間は、急な環境変化を増やさない
巣を作っているうさぎは、普段より神経質になったり、巣を守ろうとしたりすることがあります。無理に抱っこしたり、巣へ何度も手を入れたりせず、静かな環境で過ごせるようにしましょう。
巣や抜いた毛については、「残してもよい」とする情報と、状況によって撤去する考え方の両方があります。片づける時期は一律に決めず、とくに妊娠の可能性を否定できない段階では、すぐに片づけることを前提にせず、まず妊娠の可能性を考えましょう。巣材が不衛生になっているなど別の問題がある場合には、その状況も含めて対応を考えます。
偽妊娠を繰り返すなら、今後の健康管理として相談する
一度の巣作りへの対応と、偽妊娠を繰り返している場合の健康管理は分けて考えましょう。避妊手術で偽妊娠を防ぐという考え方もありますが、手術には麻酔を含むリスクもあるため、「偽妊娠をしたら避妊する」と一律に決めるものではありません。
何度も同じような巣作りを繰り返している場合は、年齢や健康状態なども含め、今後の健康管理について獣医師と話すきっかけにできます。避妊手術をするかどうかまで、巣作りを見つけたその場で結論を出す必要はありません。
まとめ|巣作りだけで結論を出さず、ほかの変化と組み合わせて考える
メスのうさぎが自分の毛を抜いて巣を作る行動は、妊娠でも偽妊娠でもみられます。そのため、巣作りだけからどちらなのかを判断しようとすると、かえって迷いやすくなります。
妊娠につながるオスとの接触がなかったかを振り返ったうえで、毛を抜いた場所の皮膚、食欲と便、元気や痛みを疑う変化をそれぞれ確認しましょう。皮膚に傷や出血がある、食べない、便が減る・出ない、元気がない、痛そうにしている、呼吸が苦しそうといった変化は、「巣作りだから」とひとまとめにしないための判断材料です。
妊娠か偽妊娠かを家庭で決めようとするよりも、いま起きている変化を分けて見ることが大切です。そうすることで、経過を確認できそうな状態か、動物病院へ相談したほうがよい状態かを考えやすくなります。





