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リクガメがひっくり返ったとき|起こした後の観察と再発防止
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リクガメがひっくり返ったとき|起こした後の観察と再発防止

飼育スペースを見ると、リクガメが甲羅を下にしてひっくり返っている。そんな場面では、「いつからこの状態だったのだろう」「すぐに何かしなければ」と焦りやすいものです。リクガメが仰向けになった状態は、放っておいてよい姿勢ではありませんが、「何分以上なら危険」と一律に判断できる明確な基準があるわけでもありません。

見つけたときは、まず安全に通常の姿勢へ戻し、その後の呼吸・反応・歩き方・外傷を確認します。さらに、高い場所から落ちたのか、高温の場所だったのか、水皿の中だったのかといった状況も、次の判断材料になります。

まずは通常の姿勢へ戻し、その後の様子を確認する

リクガメが仰向けになっているのを見つけたら、自力で起き上がれるかを試すためにそのまま待つ必要はありません。危険なく触れられる状況であれば、甲羅と身体を安定して支え、落とさないように通常の姿勢へ戻します。

陸生リクガメを調べた例では、仰向けになると肺容量や呼吸のしやすさが変化し、自力で起き上がる動きそのものにも歩行より大きな代謝負担がかかっています。そのため、「自分で起きられるか少し見てみよう」とあえて待つより、見つけた時点で介助する方が安全を優先した対応と考えられます。

持ち上げるときは、甲羅の両側を持ちながら下側も支え、身体全体を安定させます。特定の方向へ勢いよく回したり、身体を振ったりする方法は、転倒後の対応として根拠が示されたものではありません。

落下や挟まりがあるときは、単純な転倒と分けて考える

リクガメが段差や高い場所から落ち、その結果として仰向けになっていた場合は、「ひっくり返った」ことだけでなく、落下による外傷も考える必要があります。カメ類では、転落が四肢の骨折や甲羅損傷につながることがあります。

また、頭や脚が物の間に挟まっている場合は、四肢を強く引っ張って外そうとせず、可能であれば周囲の障害物を動かしてから身体を支えます。転倒そのものよりも、どういう状況で転倒したかによって確認したいことが変わります。

起こした後は「何分ひっくり返っていたか」より今の状態を見る

「いつから逆さまだったのか分からない」という不安は残りやすいですが、家庭で飼育されるリクガメに「○分以内なら安全」「○時間を超えたら危険」と一律に当てはめられる明確な基準があるわけではありません。時間は状況を伝える情報のひとつですが、それだけで危険度を決めることはできないため、起こした後は現在の状態をいくつかの方向から確認します。

呼吸を見る

通常の姿勢へ戻した後、普段と同じように呼吸できているかを見ます。持続して口を開けて呼吸している、呼吸が明らかに苦しそう、鼻や口から液体や粘液が出ている、喘鳴のような呼吸音があるといった変化は、呼吸器の異常を考える所見です。一度口を開けたというだけで状態を判断するのではなく、呼吸が苦しそうな状態が続いているか、分泌物など別の変化も伴っているかを合わせて確認します。

反応と姿勢を見る

頭や四肢を自分で動かし、通常の姿勢を保てるかも確認します。触れたり周囲に刺激があったりしたときの反応が普段より明らかに乏しい、身体に力が入らない、起こしても横倒しになるといった変化があれば、「転倒して疲れただけ」と決めつけずに考える必要があります。

自分で身体を支えて歩けるかを見る

無理に歩かせる必要はありません。安定した場所に戻したとき、自発的に身体を持ち上げ、普段と同じように四肢を使えるかを見ます。

一部の脚を使わない、引きずる、明らかにふらつく、身体を持ち上げられないといった変化は、受診を考える材料になります。とくに高い場所から落ちた後にこうした変化があれば、外傷の可能性も含めて考えます。

甲羅や身体に傷がないかを見る

甲羅に新しいひびや割れがないか、出血していないか、頭や四肢に傷や腫れがないかを確認します。甲羅は硬いため、見た目が元に戻っていると「もう大丈夫」と感じることもありますが、落下などが重なっていた場合には、転倒から起き上がれたことと、外傷がないことは別に考えます。

呼吸・反応・歩行・外傷に変化があれば受診を考える

リクガメがひっくり返っていたという出来事だけで、一律に緊急受診が必要だとはいえません。反対に、起こしたから問題ないとも言い切れないため、受診を考えるときは転倒していた時間よりも、起こした後の状態と、転倒した状況を組み合わせます。

爬虫類を診療できる動物病院への相談を考えたいのは、たとえば次のような変化が見られるときです。

  • 呼吸が明らかに苦しそう、持続して口を開けて呼吸している
  • 鼻や口から液体や粘液が出ている
  • 反応が著しく乏しい、身体に力が入らない
  • 通常の姿勢を保てない
  • 一部の脚を使わない、引きずる、正常に歩けない
  • 甲羅に新しい割れや亀裂がある、出血している
  • 頭や四肢に強い腫れや外傷がある

高所から落下していた場合も、見た目が通常姿勢へ戻ったからといって、単なる転倒として終わらせない方がよい状況です。直射日光の当たる場所や非常に高温になった場所でひっくり返っていた場合は、移動できずに熱への曝露が続いていた可能性も加わります。水皿の中で逆さまになっていた場合も、乾いた床での転倒とは条件が異なるため、その状況を動物病院へ伝えられるようにしておくと判断材料になります。

一方、起こした後に呼吸・反応・歩き方が普段と変わらず、甲羅や身体にも新しい外傷が見当たらない場合は、その後も平常時との違いがないかを確認していく余地があります。ただし、「○時間異常がなければ安全」とする線引きはありません。活動性や食欲などに普段と違う変化が出てきた場合は、その変化を含めて相談材料にします。

温浴や給餌より、まず状態の確認を優先する

転倒後に「温浴させた方がよいのでは」「水や餌をすぐに与えた方がよいのでは」と考えることもあるかもしれません。しかし、転倒したこと自体を理由に、温浴・即時の給水・即時の給餌を標準的な応急処置とする根拠は明らかではありません。

温浴は、脱水した爬虫類への水分補給を補助する方法として扱われることがありますが、「ひっくり返った=脱水している」とは限りません。また、補助的な給餌も個体の状態に応じて扱われるもので、転倒後にまず行う処置として位置づけられているわけではありません。

起こした直後は、何かを追加でするよりも、呼吸や反応、歩行、外傷を見て、次に何が必要かを判断することを優先します。

同じ場所で繰り返さないよう、転倒した地点から環境を見直す

状態が落ち着いたら、「なぜひっくり返ったのか」を転倒した場所から振り返ります。再発防止というと、段差をすべてなくしたり、飼育スペースを平らで何もない状態にしたりする方法を思い浮かべるかもしれません。ただ、リクガメの飼育環境では、隠れ場所や岩、安全に固定されたスロープも環境をつくる要素になります。見るべきなのは、物があること自体ではなく、転倒しやすい配置や、転倒した後に動けなくなる配置になっていないかです。

陸生リクガメを調べた例では、同じ個体でも硬い平らな床では自力で起き上がれず、粒状の基質では頭や四肢を使って復帰できました。これは「砂に替えれば安全」という意味ではなく、床面の状態も起き上がりやすさに関係し得るということです。

段差・器・シェルター・壁際を確認する

実際にひっくり返っていた場所を見ながら、どこから転倒した可能性があるかを確認します。段差やスロープなら、登ったり降りたりしたときに大きく傾かないか、設備そのものがぐらつかないか。シェルターや石なら、登った先から背中側へ落ちやすくなっていないか、壁との間に狭い隙間ができていないかを見ます。

リクガメの水皿には、浅いものが推奨されています。深さだけでなく、縁をまたぐときに身体が大きく傾かないか、転倒したときに鼻や口が水に接し続ける配置にならないかを確認すると、今回の事故と結びつけて考えやすくなります。

「高さ○cm以下」「角度○度以下」と一律に当てはめられる明確な転倒防止の基準があるわけではありません。数値を当てはめるより、その個体が実際にどう使っているか、転倒した地点で何が起きたのかを見る方が現実的です。

複数飼育では、転倒前の個体同士の動きも見る

複数のリクガメを同じ環境で飼っている場合は、床や段差だけでなく、個体同士の動きも確認します。リクガメでは、競争や交尾行動が転倒のきっかけになることがあります。追いかける、ぶつかる、乗りかかるといった行動の直後に同じ個体が何度も転倒しているなら、単に床材を変えるだけでは原因が残る可能性があります。

「同居個体がいれば起こしてくれる」と考えるのではなく、同居そのものが転倒のきっかけになっていないかを見る方が、再発防止につながります。

環境で説明できない転倒が続くなら身体状態も相談する

以前は問題なく歩いていたのに、最近になって転倒を繰り返すようになった。あるいは、段差や器といった明らかな原因を見直しても転倒が続く。そうした場合は、環境だけではなく身体の状態も確認対象になります。

爬虫類では、筋力低下や異常な姿勢、正常に歩けない状態を伴う疾患もあります。ただし、「何度も転倒する=病気」と決めつけることはできません。

転倒回数だけを見るのではなく、歩き方や姿勢そのものが以前と変わっていないかを合わせて見て、必要に応じて爬虫類を診療できる獣医師へ伝えます。

まとめ

リクガメがひっくり返っているのを見つけたら、危険なく触れられる状況では、甲羅と身体を安定して支えて通常の姿勢へ戻します。その後に見るのは、「何分ひっくり返っていたか」だけではありません。呼吸・反応・歩き方・外傷を確認し、高所からの落下、高温、水などの条件が重なっていなかったかも合わせて考えます。

状態が落ち着いた後は、転倒した地点に戻って、段差、床面、器、シェルター、壁との隙間、同居個体との動きを振り返ります。「起こせば終わり」でも、「一度ひっくり返ったらすぐ危険」でもありません。起こした後の今の状態と、転倒が起きた状況の両方を見ることで、次に何をすればよいかを判断しやすくなります。

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