猫が眠っているときや目を覚ました直後、目頭から白〜淡いピンク色の膜がのぞいていることがあります。普段は見えないため、「目に何かできたのでは」「病気のサインだろうか」と気になるかもしれません。
この膜は、猫にもともと備わっている 第三眼瞼(だいさんがんけん) です。「瞬膜」とも呼ばれます。眠っているときなどに一時的に見えることがある一方で、十分に起きても出たままになっている場合は、目や体の状態をもう少し確認したい変化でもあります。
判断するときは、瞬膜が見えたことだけではなく、いつ見えるのか、起きると戻るのか、片目か両目か、ほかの症状がないかを組み合わせて考えます。
猫には「3枚目のまぶた」がもともとある
猫の第三眼瞼は、鼻に近い目頭側にある正常な体の構造です。普段、十分に起きている健康な猫では大部分が隠れているため、存在に気づかないことも珍しくありません。
人でよく意識する上まぶた・下まぶたとは別にあることから、「3枚目のまぶた」と表現されます。見えたから新しく何かができたわけではありません。
瞬膜は目を守り、涙にも関わっている
第三眼瞼は、眼球の表面を守る働きに関わっています。また、第三眼瞼には涙をつくる腺があり、涙液の産生や眼球表面への分配にも関係しています。つまり、普段は目立たなくても、猫の目を守る仕組みの一部なのです。
眠いときに瞬膜が見えることはある
猫が眠っているときや、うとうとしているときには、第三眼瞼が目頭側から一時的に見えることがあります。目を覚ました直後に見えていても、しっかり覚醒するにつれて引っ込む場合があります。そのため、寝ているときに瞬膜が見えたという事実だけで、病気とは判断できません。
一方、健康な猫が十分に起きて活動しているときには、第三眼瞼は通常、目立って突出していません。眠っているときだけ見えて、起きると戻る場合と、起きてからも見え続けている場合は分けて考えます。
「何分までなら大丈夫」という基準はない
「起きてから10分なら大丈夫」「1時間出ていたら異常」といった、猫の正常と異常を分ける一律の時間基準はありません。
時計で時間だけを測るよりも、
- 眠っているときだけ見えるか
- 十分に起きると引っ込むか
- 覚醒していても繰り返し見えるか
- 目や全身にほかの変化がないか
という状態の違いを見るほうが、判断材料になります。
瞬膜が見えたら、4つのことを一緒に確認する
瞬膜の見えている面積だけでは、原因や受診の必要性までは分かりません。家庭では次の4つを一緒に確認すると、状況を整理しやすくなります。
1. 起きたあとに引っ込むか
最初に確認したいのは、猫の覚醒状態との関係です。眠っているときや寝起きだけに見え、十分に起きると元の状態へ戻るのであれば、生理的に一時露出している可能性があります。反対に、猫が起きて歩いたり食事をしたりしているのに瞬膜が目立ったまま、あるいは以前より頻繁に見えるようになった場合は、睡眠中だけの変化とは分けて考えます。
2. 片目だけか、両目か
左右のどちらに見えているかも確認します。片目だけに出ている場合と、両目にほぼ同じように出ている場合では、獣医師が原因を考えるときの方向づけが変わることがあります。ただし、片目なら目の病気、両目なら全身の病気、と家庭で分けることはできません。 左右差は病名を決めるものではなく、診察時にも役立つ観察情報のひとつです。
3. 目の痛みや充血、濁りはないか
瞬膜と一緒に、目そのものの様子も見ます。
たとえば、
- 目を細めている、閉じたままにする
- 目をこすろうとする
- 涙が増えている
- 目やにが出ている
- 白目や目の周囲が赤い
- 黒目の表面が白っぽい、青白く濁って見える
- 瞳孔の大きさや眼球の位置が左右で違って見える
といった変化です。
瞬膜の突出はひとつの所見であり、角膜や結膜、眼球の位置などに異常があるときにも同じように見えることがあります。特に痛みや角膜の濁りがある場合は、瞬膜そのものだけでなく、背景にある目の異常を確認する必要があります。
4. 元気や食欲、便の様子に変化はないか
両目の瞬膜が出ている場合などには、目だけでなく全身の様子も合わせて確認します。元気や食欲に変化がないか、嘔吐や下痢がないかなど、普段との違いを見ておくと診察時の情報になります。
猫では、両目の第三眼瞼が突出する状態と消化器症状が同時にみられることも報告されています。ただし、下痢があるから特定の病気、瞬膜が出たから脱水、と見た目だけで原因を決めることはできません。
片目か両目かだけでは、原因は決められない
片目だけに瞬膜が出ている場合、獣医師は目そのものや眼球周辺、第三眼瞼、神経系などの局所的な問題も含めて原因を検討します。両目に出ている場合には、目だけでなく全身状態や自律神経系に関係する状態も検討対象になります。
ただ、左右の出方はあくまで手がかりです。片目から始まって両目に変化が及ぶ眼疾患もあるため、「片目だからこの原因」「両目だからこの原因」とは分けられません。
両目に出る「ホーズ症候群」とは
猫では、両目の第三眼瞼が急に突出し、詳しい眼科的な評価で別の明らかな異常が見つからない場合に、ホーズ症候群(Haws syndrome) と呼ばれる状態が考えられることがあります。下痢などの消化器症状を伴う猫もいますが、すべての猫に下痢がみられるわけではありません。原因も十分には分かっていません。
そのため、「両目に瞬膜が出ていて下痢もあるからホーズ症候群」と見た目だけで判断することはできません。ほかの原因を評価したうえで考えられる状態です。
起きても戻らない、痛みや濁りがあるときは相談を
眠っているときにだけ瞬膜が見え、十分に起きると戻り、目にも全身にもほかの変化がないのであれば、それだけで異常とはいえません。
一方で、次のような変化がある場合は、動物病院へ相談する材料になります。
- 十分に起きても瞬膜が引っ込まない
- 覚醒中にも何度も繰り返し目立つ
- 以前より露出が増えている
- 片目だけ明らかに出ている
- 充血、涙、目やになどを伴う
- 元気や食欲が落ちている
- 嘔吐や下痢など、全身にも変化がある
「何時間続いたら受診」という一律の時間ではなく、覚醒後にも残っているか、ほかの変化を伴っているかを手がかりにします。
痛みや外傷があるときは様子見を続けない
目を強く細めて開けられない、黒目の表面が濁っている、強い充血や涙がある、外傷や異物が疑われる、急に見えていないような行動をするといった場合は、より速やかな評価が必要になります。角膜の傷や潰瘍など、強い痛みを伴い、進行すると視覚に影響する眼疾患もあるためです。
こうした変化があるときは、瞬膜が引っ込むかを長く待つより、動物病院へ連絡して状況を伝えるほうが判断につながります。
手元の目薬を自己判断で使わない
以前、別の目の症状で処方された目薬が残っていても、今回も同じ原因とは限りません。角膜の状態によっては使用を避ける薬もあります。
人用の目薬についても、獣医師の確認なく猫へ使うのは避けます。人用製剤の中には猫に有害となりうる成分を含むものもあります。
目の見た目だけでは原因を区別しにくいため、薬で瞬膜を引っ込めようとするのではなく、覚醒時の見え方や痛み、充血などの状態を伝えて確認してもらいます。
まとめ
猫の瞬膜は、突然できた異常な膜ではなく、もともと目頭側にある「3枚目のまぶた」です。眠っているときや寝起きに一時的に見えることもあります。
見つけたときは、「瞬膜が見えたかどうか」だけで判断せず、十分に起きると戻るか、片目か両目か、痛み・充血・濁りなどがないか、元気や食欲に変化がないかを合わせて確認すると、状況を整理しやすくなります。覚醒後も出たままになっている場合や、目の痛み・濁り・外傷などを伴う場合は、眠いときに見える瞬膜とは分けて考え、動物病院への相談につなげます。




