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文鳥はどうやって歌を覚える?さえずりの学習と個体差
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文鳥はどうやって歌を覚える?さえずりの学習と個体差

一緒に暮らす文鳥の歌を聞いていると、よく似たフレーズが繰り返し現れます。ほかの文鳥の声と聞き比べて、「どうしてうちの子はこの歌なのだろう」と感じたことはないでしょうか。

オスの文鳥の歌は、成長中に聞く歌や、自分で声を出す経験によって形づくられます。 生まれつきの性質を土台にしながら学ぶため、すべての文鳥が同じ歌になるわけでも、聞いた音を何でもそのまま覚えるわけでもありません。歌の学習と個体差を知ると、いつもの声にも、その子が育ってきた時間が感じられます。

文鳥の歌は、生まれつき完成しているわけではない

ここでいう歌は、オスの文鳥が求愛にも使う、いくつかの音をつないださえずりです。文鳥の声をすべて同じものとして扱わず、このまとまりのある歌に注目してみましょう。

歌の形には、育つ間に関わった成鳥の影響がはっきり表れます。文鳥73羽の録音を調べた2021年の研究では、卵をほかの親に育ててもらった個体も含めて比較すると、息子の歌に含まれる音の種類や並び、音の響きの特徴は、血縁よりも育ての父親の歌に似る傾向がありました。

父子の歌が似ることは、遺伝だけでは説明できません。ただし、この研究で遺伝の効果を検出しなかったことと、歌に関わるあらゆる性質が遺伝と無関係であることは別です。文鳥が歌を身につけるしくみと、どんな歌を学んだかを分けると理解しやすくなります。

聞いて覚えることと、自分で声を出すこと

鳴禽と呼ばれる、さえずりを学ぶ鳥の歌学習には、大きく2つの働きがあります。お手本の歌を聞いて記憶することと、自分で声を出し、その声を聞きながら発声を調整することです。

歌を身につける働き起きていること
お手本を聞いて記憶する成鳥の歌を、後の発声の手がかりとして覚える
自分の声を聞いて調整する記憶した歌を手がかりに、発声を繰り返しながら自分の歌を形づくる

この2つは、きれいに切り替わるとは限らず、重なる時期もあります。文鳥が育ての父親から歌を学ぶことは、周りの声を聞く経験が歌の材料になることを示しています。

一方、自分の声を聞く働きは、同じ鳴禽のキンカチョウの実験でよく分かります。若鳥が自分の声を聞き取りにくい環境では、お手本に似た歌を作る過程が妨げられ、その環境を解除すると、以前に聞いた歌の記憶を使って発声を近づけていきました。これは文鳥そのものの実験ではありませんが、歌学習を「聞いて覚えるだけ」と考えないための手がかりになります。

歌が安定する時期は、全員共通の締め切りではない

歌の音や並びが安定することを、歌の「結晶化」と呼びます。飼育下の文鳥を調べた研究では、歌学習が終わる時期をおよそ生後150〜180日と推定しています。月齢では5〜6か月ほどですが、これは研究対象の文鳥について、音の種類や構造が安定する様子から見積もったものです。

家庭で「この日までに完成しなければいけない」と判断するための日付ではありません。また、歌の形が安定することと、その後に歌い方がまったく変わらなくなることも異なります。

歌の個体差は、音の種類だけでは分からない

文鳥の歌を聞き比べるときは、使う音、音をつなぐ順番、速さや間の取り方を分けて聞くと、違いを捉えやすくなります。同じような音を使っていても、並び方や歌い方まで同じとは限りません。

育ての父親と似る特徴がある一方で、歌のすべてが同じように受け継がれるわけでもありません。2021年の文鳥の研究では、音の構造や響きの類似とは対照的に、同じ音を繰り返すときの安定性については、父親からの学習を明確に裏づける結果は得られませんでした。年齢や育った環境との関係もあり、何を歌うかと、どう歌うかには、異なる要因が関わります。

そのため、歌が短い、音の種類が少ない、別の子と違うという特徴だけで、学習能力や育て方の良し悪しを決めることはできません。お手本の歌が違えば、よく学んだ結果として生まれる歌も違います。

歌の合間のクリック音には、生まれつきの面もある

文鳥の歌には、声に加えて、くちばしで出す短いクリック音が入ることがあります。文鳥を対象にした実験では、同じ種のお手本から歌を教わらずに育った個体にも、この音がありました。くちばしで音を出す行動自体には、生まれつき備わった面があると考えられます。

一方、どの歌の音の前後にクリック音を入れるかは、育ての父親と息子で似ていました。クリック音の出し方を直接まねたのか、学んだ歌と結びついて配置が似たのかは切り分けられませんが、歌には学習する部分と、それだけでは説明できない部分が組み合わさっています。

成鳥になってからも、歌い方は変わる

歌の結晶化は、その後の変化がすべて止まることを意味しません。文鳥17羽を繰り返し録音した研究では、歌が安定した後の若い時期と、その後の録音を比べると、歌の長さやテンポが増していました。一方で、使う音の種類数や、音の並びの複雑さには同じような変化がありませんでした。

つまり、覚えた歌の基本的な形を保ちつつ、歌い方が変わることがあります。成長後に少し速く、長く聞こえるようになっても、それだけで新しい歌を一から覚えたとはいえません。同様に、この変化を根拠に、成鳥でも好きな歌へ自由に置き換えられるとは考えない方がよいでしょう。

家庭では、上手に歌わせるより変化を楽しむ

歌学習を知ると、「よい歌をたくさん聞かせれば、同じ歌になるのでは」と思うかもしれません。ただ、文鳥の歌学習では、成鳥との社会的な関わりも重要です。育ての父親から学ぶ結果を、そのまま録音や動画の再生効果に置き換えることはできません。

家庭では歌の完成度を目標にするより、自然に歌っているときの声を、ときどき同じくらいの距離から録音して聞き返す楽しみ方もあります。聞きどころを決めるなら、次の3つが分かりやすいでしょう。

  • よく繰り返す音やフレーズは何か
  • 音の並びや、繰り返す場所にその子らしさがあるか
  • 成長につれて、速さや歌の続く長さがどう変わったか

別の文鳥との順位をつけるためではなく、同じ子の以前の声と比べてみてください。短い歌にも、繰り返しの多い歌にも、その子が学んだ歌の特徴があります。

まとめ:その子の歌には、学んだ経験が重なっている

オスの文鳥の歌は、生まれつき完成したものがそのまま現れるのではなく、成長中に聞く歌や発声の経験を通じて形づくられます。育ての父親から受け継ぐ特徴があり、歌が安定した後も、長さやテンポには変化が生じます。

歌の違いを「上手・下手」だけで捉えず、どんな音をどうつないでいるかに耳を傾けてみましょう。いつものさえずりは、その子の育ちと成長が重なった声として楽しめます。

この記事で参考にした資料(6件)

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