ペットホテルで飼い主を待つ間も、保護施設で新しい家庭を探す間も、動物には毎日の暮らしがあります。食事や水に加えて、安心して休むこと、体を動かすこと、体調の変化に気づいてもらうことも必要です。
ニュージーランドには、こうした一時的な収容を対象とする動物福祉の基準があります。「預かっている間」にも、その動物に必要な暮らしを支える責任がある。 施設の種類や動物の違いに目を向けながら、基準が守ろうとするものを見ていきましょう。
ペットホテルと保護施設に共通する、世話の責任
ニュージーランドの動物福祉法は、動物の所有者と、その動物を管理している人に、身体・健康・行動上の必要を満たす責任を求めています。家族として一緒に暮らす人だけでなく、世話を引き受ける人にも関わる考え方です。預けたことで、飼い主自身の責任がなくなるわけでもありません。
その責任を施設での世話に具体化したものが、伴侶動物の一時収容に関する福祉基準です。ペットホテル、保護施設、自治体の収容施設、ペットショップ、デイケアやトリミング施設などが対象です。施設で保護される、飼い主の分からない犬猫も含まれます。
一方、一般家庭での一時預かり、訓練施設、災害時の臨時避難施設、飼い主自身が展示会などで一時的に収容する場合は対象外です。動物病院でも、治療や獣医師の監督のための収容は対象外ですが、併設されたペットホテルは対象になります。こうした適用範囲の違いによって、動物福祉法上の世話の責任がなくなるわけではありません。
預かる目的が違っても、動物に必要な食事、水、休息や健康管理は続きます。帰宅や譲渡までの期間を、安全に待たせるだけでなく、生活する時間として捉えることが出発点になります。
最低基準と、よりよい世話の推奨を分けて読む
ニュージーランドの動物福祉の基準には、最低基準と、よりよい世話のための推奨があります。どちらも動物の福祉に関わりますが、制度上の位置づけは同じではありません。
| 区分 | 役割と具体例 |
|---|---|
| 最低基準 | 満たすべき世話の水準。例えば、病気やけがの兆候がないか、少なくとも1日2回、動物の様子を目で確認する |
| よりよい世話のための推奨 | 世話をさらに改善するための取り組み。例えば、24時間の緊急対応を受けられる獣医師・動物病院との取り決めを設ける |
最低基準を満たしていないことは、動物福祉法違反を問う裁判で、法律上の義務を果たしていないことの証拠になり得ます。反証することもでき、基準の一項目に届かないことが、そのまま独立した犯罪になる仕組みではありません。法律や、法律に基づく規則の義務もあわせて守る必要があります。
一方、推奨をすべて最低基準と同じ義務として読むこともできません。海外の制度を知るときには、「何が求められる最低水準か」と「その先にどんな改善を目指すか」を分けると、制度の狙いが見えやすくなります。
犬猫だけでなく、動物ごとの必要を満たす
一時収容の基準は、人と暮らし、世話を人に頼る伴侶動物を広く対象にしています。犬猫に限らず、うさぎやモルモット、飼い鳥、観賞魚などにも関わります。犬や猫など、動物種に応じた別の福祉基準がある場合は、そちらもあわせて参照します。
最低基準には、動物の種類や年齢、健康状態に合った食事と栄養を与えること、休む・眠る・伸びをする・泳ぐ・飛ぶなど、その動物に合った行動ができる十分な空間を確保することが含まれます。温度や光、空気や水の質にも、種類ごとの必要を満たすことが求められます。
具体的には、鳥には太さの異なる止まり木や休息場所を用意し、水槽では飼育する種類と密度に合った、常に機能するろ過装置を備えることが最低基準に入っています。囲いの中に入れられるかどうかだけでなく、そこで必要な行動や生活ができるかを見ています。
うさぎやげっ歯類に合った敷材・巣材を用意することは、行動に関する最低基準を満たしているかを見る具体的な目安に挙げられています。猫に高い場所や隠れ場所を用意することは、よりよい世話のための推奨です。細かな例にも、最低基準・達成状況の目安・推奨という違いがあります。
一時的な場所でも、その動物にとって必要な世話が省略されてよいわけではありません。 預かる頭数や施設の見た目だけでなく、そこで動物がどのように過ごせるかに目を向ける視点です。
動物福祉の基本的な考え方は、次の記事でも紹介しています。
設備と一緒に、世話を続けられる体制を見る
施設での暮らしを支えるのは、建物や囲いだけではありません。最低基準は、十分な人数のスタッフが、全体として必要な能力・知識・技能を備えて世話をすることを求めています。ここでいうスタッフには、有給の職員だけでなく、世話を担うボランティアも含まれます。
受け入れ時には、経験や資格のある人が健康・行動上の明らかな問題を確認し、動物ごとにたどれる健康記録を作ります。飼い主が所有権を保って預ける場合には、病気やけがの際に飼い主へ連絡がつかなくても獣医療を受けられるよう、同意書への署名が必要です。
滞在中の確認も、異変に気づいた後の対応までつながります。急な強い痛みや慢性的な苦しみ、急速な健康状態の悪化、重いけががあれば、獣医師や適切な訓練を受けた動物医療の専門職に直ちに対応を求めることが最低基準です。感染症が疑われる動物を隔離するための設備も、すぐに使える状態で用意しなければなりません。
火災・洪水・停電など、動物に悪影響が及ぶ緊急事態へ対応できるようスタッフを訓練することも最低基準に含まれます。一方、少なくとも1人のスタッフが常時施設にいることは推奨です。1日2回の目視確認という最低基準と、夜間を含む常駐の推奨は、それぞれ別のものです。
ここには、動物を受け入れることと、受け入れた後の世話を支えることを一緒に考える視点があります。保護する頭数や預かれる部屋数だけでなく、その動物を毎日見て、必要な世話につなげられるかが問われます。
基準があることと、運営が確かめられること
ニュージーランドの動物福祉団体(SPCA)は、ペットホテルや保護施設などについて、独立した検査と規制の充実を求めています。同団体の説明では、これらの施設は現在、定期的な検査の対象にはなっていません。
基準を設けることと、その基準に沿った運営を継続して確かめることは、別の課題です。制度の存在だけで、すべての施設の世話が同じ水準にそろうわけではありません。
この基準を知ることは、預け先に具体的な質問をする手がかりにもなります。動物の様子を誰が見ているか、体調が変わったときにどう対応するか、どのような環境で休めるか。日本の施設にニュージーランドの基準が適用されるわけではありませんが、説明を受ける際の着眼点として考えられます。
預かる時間も、一匹の暮らしとして支える
ニュージーランドの一時収容の基準から考えたいのは、動物が家族と離れている間も、その動物に必要な暮らしが続くということです。食事や住まい、行動できる環境を、世話をする人と運営の体制が支えます。
海外の動物福祉政策を見るときは、最低基準の内容に加えて、よりよい世話への推奨や、実際の運営をどう確かめるかにも目を向けてみてください。「どこに預けるか」の先にある、「そこでどう暮らせるか」を考える手がかりになります。






