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三毛猫にメスが多いのはなぜ?毛色とX染色体のしくみ
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三毛猫にメスが多いのはなぜ?毛色とX染色体のしくみ

顔の片側に茶色、背中には黒い斑、おなかや足先は白。同じ三毛猫でも、色の面積や模様の配置はさまざまです。その多くがメスであることも、よく知られています。

この二つの特徴をつなぐのが、茶系と黒系の毛色に関わるX染色体と、細胞ごとの使い分けです。さらに白い部分には、別のしくみが関わっています。3色ができる過程を分けて見ると、性別との関係も、一匹ごとの模様の違いも理解しやすくなります。

茶系と黒系の切り替えに関わるX染色体

三毛猫の「茶色」は、オレンジ色や赤茶色に見える毛を指します。この茶系の毛色では、赤や黄色系の色素であるフェオメラニンが多くなります。一方、黒系の毛色をつくる中心は、黒や褐色の色素であるユーメラニンです。

このどちらの色素を多くつくるかという切り替えに関わる遺伝情報が、X染色体上にあります。染色体は、遺伝情報を含むDNAがまとまったものです。X染色体は性染色体の一つで、毛色に関わる情報も含んでいます。

2025年には、猫のオレンジ色の毛に関わる遺伝子が「ARHGAP36」であることが明らかになりました。オレンジ色の毛を持つ猫では、この遺伝子領域のDNAの一部が欠けており、色素をつくる細胞で遺伝子の働きが変わることで、茶系の色素を多くつくる方向へ切り替わります。遺伝子が丸ごとなくなる、という意味ではありません。

ただし、猫の毛色の濃淡や細かな模様は、ほかの遺伝子にも左右されます。ここでは三毛猫の基本を捉えるため、オレンジ色になる側を「茶系」、そうならない側を「黒系」として見ていきましょう。

メスに多いのは、X染色体を2本持つため

猫の性染色体は通常、メスがXX、オスがXYです。メスはX染色体を2本持つため、毛色に関わる領域について、片方に茶系になる型、もう片方に黒系になる型を持つことができます。これが、茶系と黒系の両方が現れるための土台です。

一方、通常のオスが持つX染色体は1本です。そのため、この毛色の切り替えについては茶系か黒系のどちらかになり、メスと同じ組み合わせを持ちにくくなります。

白い部分や、ほかの毛色遺伝子の影響をいったん分けると、組み合わせは次のように捉えられます。「茶系」「黒系」は、X染色体上の毛色に関わる領域の違いを表したものです。

通常の性染色体毛色に関わる組み合わせ茶系・黒系の現れ方
メス:XX茶系と茶系茶系が基本になる
メス:XX黒系と黒系黒系が基本になる
メス:XX茶系と黒系茶系と黒系のまだら模様になる
オス:XYXに茶系茶系が基本になる
オス:XYXに黒系黒系が基本になる

つまり、メスなら必ず三毛になるわけではありません。 茶系と黒系の組み合わせを持ち、さらに白い部分が加わると、三毛の毛色になります。

細胞ごとのX染色体の使い分けが、まだら模様をつくる

茶系と黒系の情報を両方持っていても、全身で二つの色が混ざり合って中間色になるわけではありません。体ができ始める早い段階で、細胞ごとに2本のX染色体のうち片方の働きが大きく抑えられます。これをX染色体の不活性化といいます。

どちらのX染色体が抑えられるかは、細胞ごとにランダムに決まります。茶系になる側のX染色体が働く色素細胞では茶系に、黒系になる側が働く色素細胞では黒系に向かいます。不活性化は染色体そのものが消えることではなく、同じ遺伝情報を持っていても、働く側に違いができるしくみです。

その後、細胞が分裂して増えると、基本的にその使い分けも引き継がれます。同じ側のX染色体を使う色素細胞の集団ができることで、茶系の部分と黒系の部分が、体表の斑として現れます。

細胞ごとに茶系か黒系のどちらかのX染色体が働き、その使い分けを保った色素細胞の系統が増えて、茶系・黒系の斑模様につながる模式図。各細胞には2本のX染色体を記号で示し、不活性化した側も残している。白い部分は別のしくみで生じる。

Xは染色体を表す記号で、細胞数や斑の配置は模式的に示しています。

模様の配置まで、親からそのまま受け継ぐわけではない

一匹ごとの模様には、最初にどちらのX染色体が働くことになったかに加え、その後の色素細胞の増殖や分布も関わります。そのため、同じ茶系と黒系の組み合わせを持つ猫でも、斑の位置や大きさ、色の面積はそろいません。

親から受け継ぐ毛色の遺伝情報は、模様が生まれる条件をつくります。一方で、「右頬を茶色にする」「背中のこの場所に黒い斑を置く」といった配置まで、そのまま受け継ぐわけではありません。発生の過程で生じる偶然性が、三毛猫それぞれの模様につながっています。

白い部分は、色素細胞の分布に関わる別のしくみ

三毛猫の白は、茶系と黒系の切り替えだけでは説明できません。白い部分は、毛に色素が入っていない部分です。白い色素をつくっているわけではありません。

猫の白い斑には、X染色体とは別の常染色体にある「KIT」という遺伝子の変化が関わります。常染色体とは、性染色体以外の染色体のことです。この白斑のしくみは、体ができる過程での色素細胞の生存や分布に影響し、色のつかない部分を生みます。

茶系と黒系のまだら模様があり、白がほとんどない猫は、一般にサビ猫と呼ばれます。三毛猫とサビ猫は、茶系と黒系をつくり分ける基本のしくみを共有しています。三毛猫ではそこに白斑が加わり、色のある斑も、サビ猫より大きくまとまって見える傾向があります。

白斑の広がりも、遺伝情報だけで細かな配置がすべて決まるものではありません。白斑に関わる同じ遺伝子の変化を受け継いだきょうだいでも、白い部分の程度には違いが生じます。

まれにオスの三毛猫が生まれるのはなぜ?

通常のオスはXYですが、例外としてX染色体を2本持つXXYの猫がいます。この場合は、2本のX染色体に茶系と黒系の組み合わせを持つことができ、X染色体の不活性化によって両方の色が現れる余地が生まれます。白斑も加われば、オスでも三毛になります。

ただし、オスで茶系と黒系のまだら模様になる理由は、XXYだけではありません。異なる受精卵に由来する細胞が一つの体に共存する「キメラ」でも、こうした毛色になることがあります。

実際に、オスのサビ猫では、XXYで繁殖能力のない症例と、XYの異なる細胞系統が共存するキメラで、繁殖能力のある症例が報告されています。毛色だけで、その猫の染色体構成や繁殖能力まで決めることはできません。 オスの三毛猫は、通常のXX・XYによる説明には例外もあることを教えてくれます。

まとめ

三毛猫にメスが多いのは、茶系と黒系の切り替えに関わる情報がX染色体上にあり、通常はX染色体を2本持つメスで、両方の組み合わせが生まれるためです。細胞ごとに働くX染色体が異なり、その状態が細胞の増殖後も引き継がれることで、まだら模様ができます。

白い部分は、色素細胞の生存や分布に関わる別のしくみで生まれます。受け継いだ遺伝情報に、体ができる過程での偶然性が重なって、一匹ごとの模様が形づくられているのです。

この記事で参考にした資料(5件)

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