飼い猫に子猫が生まれたとき、その後の世話を誰が引き受けるのでしょうか。家庭での繁殖は、新しい飼い主を探す人や、行き場を失った猫を受け入れる保護施設にも関わります。
ベルギーのフランデレン地域では、飼い猫の不妊去勢を原則として義務づけ、手術を済ませる時期や譲渡の条件まで定めています。一匹の繁殖管理を、その先に生まれる猫の暮らしと結びつける制度です。対象と例外、手術を支える登録や地域の取り組みを見ていきましょう。
家庭での繁殖を、地域全体の課題として考える
ベルギーでは、2014年に動物福祉に関する権限が連邦政府から地域へ移りました。ここで紹介するのは、フランデレン地域の制度です。ワロン地域やブリュッセル首都地域にもそれぞれの制度があり、この記事の期限や条件はフランデレン地域に限ったものです。
不妊去勢を求める狙いには、望まない繁殖を防ぎ、飼い主のいない猫や周辺の生活環境への影響を減らすことがあります。保護施設やボランティアが引き受ける世話には、時間と費用がかかります。生まれた猫を保護する活動と並行して、家庭で新たな繁殖を防ぐ責任を求めているのです。
制度上の不妊去勢は、オスの去勢と、メスの卵巣または卵巣と子宮を摘出する手術を指します。対象はメスだけではなく、オスも含まれます。
生後5か月になる前と、譲渡前のルール
一般の飼い主には、2014年9月1日以降に生まれた猫を、生後5か月になる前に不妊去勢する義務があります。この「5か月」はフランデレン地域の法的な期限です。また、猫を新しい家庭へ渡すときにも、手術を済ませておくことが求められます。
| 猫が置かれる場面 | 基本となるルール |
|---|---|
| 一般家庭で飼育する | 対象となる出生年の猫は、生後5か月になる前に不妊去勢する |
| フランデレン地域内の一般家庭へ販売・無償譲渡する | 引き渡す前に不妊去勢を済ませる。保護施設からの譲渡も手術後に行う |
| 外国やベルギーの別の地域から迎える | 認定繁殖者向けを除き、生後5か月になる前に実施する。到着時にすでに5か月を超えていれば、到着から30日以内に行う |
無料で譲る場合も、一般家庭へ渡す前の手術が必要です。「新しい飼い主があとで手術する」という約束だけで、未手術の猫を渡せる仕組みではありません。また、出生年によって飼育中の手術義務の対象にならない猫も、一般家庭へ譲渡する際には不妊去勢が求められます。
認定繁殖者や保護施設には、別の扱いがある
認定を受けた繁殖者と保護施設は、生後5か月になる前という基本期限の対象から除かれます。未手術の猫を認定繁殖者や保護施設へ引き渡すこと、フランデレン地域外に住む人へ引き渡すことにも例外があります。
ただし、認定繁殖者から一般家庭へ販売する猫は、引き渡し前の手術が必要です。保護施設も、新しい飼い主へ譲渡する前に手術を行います。繁殖や保護を担う立場の例外と、家庭へ迎える際の条件は分かれています。
飼い主に同行してベルギーに6か月未満滞在する猫は、この政府決定の対象外です。暮らす場所を移す場合と短期滞在では、適用される扱いが異なります。
手術と登録を結びつけ、責任を引き継ぐ
不妊去勢は、手術を受けるだけでなく、猫の登録情報とも結びついています。獣医師が手術を行い、8日以内に猫の登録データベース「CatID」へ記録します。手術の証明はデジタルで交付されます。
猫の登録には、マイクロチップの番号、猫の情報、世話に責任を持つ人の連絡先などを使います。手術の実施状況も同じデータベースで扱うことで、その猫を識別し、誰が責任を持っているか、手術を受けているかを確かめる仕組みになります。
飼い主が変わったときや引っ越したときには、登録情報の更新も必要です。猫が迷子になったときに連絡がつくことや、新しい家庭へ責任を引き継ぐことまで含めて、繁殖管理を支えています。
義務を支える費用と、地域での世話
不妊去勢の義務を実行するには、手術を受けられることと、その費用を負担できることも関わります。フランデレン地域には、猫の不妊去勢に助成を設けている自治体があります。利用できる支援は住む自治体によって異なります。
すでに飼い主のいない猫への対応は、自治体にも役割があります。自治体は住民からの通報窓口を設け、対応の計画を作って実施します。猫を元の場所へ戻す場合には、管理された給餌と、雨風などを避けられる十分な場所を確保することが求められます。保護施設やほかの団体と協定を結び、対応を担ってもらうこともできます。
飼い猫の新たな繁殖を防ぐことと、すでに地域で暮らす猫を世話すること。その両方が制度に含まれています。日本の地域猫活動にも、不妊去勢と日々の管理、住民との調整を組み合わせる取り組みがあります。
義務化の後も、保護や地域での対応は続く
2024年の自治体調査では、回答した190自治体から、飼い主のいない猫8,746匹への不妊去勢が報告されました。義務化の後も、地域では手術や保護の活動が続いています。
この調査は全自治体の回答がそろった集計ではなく、年によって回答した自治体数も異なります。制度の成果を考えるときには、手術件数に加えて、どれだけの地域を調べた数字なのかを見る必要があります。件数の増減だけで義務化の効果を決めず、支援がどこまで届き、保護された猫がどのように暮らしているかも確かめたいところです。
一匹の繁殖管理から、その先の暮らしまで
フランデレン地域の制度は、飼い猫の不妊去勢を飼い主の責任として定め、譲渡前の手術、獣医師による登録、自治体の対応へとつないでいます。猫を迎える家庭と、地域で猫を支える人たちの役割が見えてきます。
動物福祉の政策を知るときは、求められる義務に加え、それを実行できる支援や、すでに保護を必要としている猫の世話にも目を向けてみてください。一匹の猫と暮らすことを、社会の中でどう支えるかを考える手がかりになります。







